17世紀に長崎の出島に異国商館が移されたのをきっかけにオランダやポルトガルから日本に伝来され、今日に至るまで非常に多くの人々に飲まれて来たコーヒー。伝来当初は「焦げくさくして味ふるに堪ず」と言われてきたコーヒーは国内に嗜好品として広く普及するに至るまでは長い時間を要しました。
一杯の芳醇なコーヒーを求め人々が集い、老若男女問わず、節度を持って楽しむ喫茶店文化が当たり前のようにそこら彼処にありました。しかし高度経済成長の波も一旦落着き、諸外国からの様々な文化や価値観が流入しだし、良い影響を受けた反面、失われた、また失われそうになった伝統や文化や価値観も多分にありました。その中でも個人主義への傾倒は顕著であり、プライベート敬重主義の影響から欧米スタイルのカフェ文化が台頭しその増加に伴い昔ながらの日本人の
アイデンティティに根付き発展してきた喫茶店文化はどんどん失われて来ました。またただ単に喫茶店文化が衰退していっただけではなく、そこに集う人々によって時に護られ、時に発展してきた地域社会の伝統や文化も衰退していきました。
今回の会場である高野町・九度山町(紀伊地方)では、そういった地域社会の伝統と文化が現在との接点を失いつつある地方であると私たちは感じています。少なくとも、一昔前に存在した賑わいは姿を消しているところもあります。しかし、同時に自然の美しさや厳かさも存在しています。
コーヒーの放つ魅惑に誘われた人々が集い、そこに会話が生まれ、文化や藝術が華を添え、より珈琲文化が、そして地域社会が健全に、心豊かに発展していく。そんな好循環環境が一杯のコーヒーから生まれることを目指し、私たち日本コーヒーフェスティバル実行委員会はこの度、『Japan Coffee Festival 2017 inKII』を開催する事に致しました。
人を味わい、地域を味わい、文化や藝術を味わうからこそ珈琲は美味い。珈琲豆と水と空気とだけでは成り立たないのがコーヒーであり、そこにコーヒーの奥深さや魅力があるのではないでしょうか?
そんなことを考え感じ、体験しながらこのコーヒーフェスティバルを愉しんで頂ければ幸いです。今回の開催は南海電気鉄道株式会社様のご協力(開催会場区間一日フリー乗車券の発行)により、電車に乗って各会場を行き来することができます。ぜひ、お気に入りのマグカップをお供に街並みを歩き、自分の身体を以て体験していただきたく思っております。
そして、ぜひとも各出店者さまや出演者さま、そして実行委員やボランティアスタッフ、地元住民の方々とのコミュニケーションもコーヒーとともにじっくり味わっていただきたく思います。